(フィクション)
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「あんたねぇ…。仮にもライバル雑誌のスタッフなんだから、ウチに入り浸っちゃまずいでしょ?」

間違いなく、月刊メビウスの編集部のはずなのだけど、目の前には有名な写真週刊誌、週刊FLAPの編集部員の…仮にAとしておこうか。
そのAが、何食わぬ顔をしてウチの休憩室においてある煎餅をバリバリと音を立てながら食べている。
「うちは大手だから、メビウスみたいな弱小出版社なんて相手にしないでしょー?」

まあ、実際問題FLAPは大手出版社の看板雑誌だし(最近落ち目だそうだけど。どこもそうだよねぇ…)。かたや、ウチといったら新興製薬会社最大手のグループだとは言っても、(少なくとも見た目は)吹けば潰れてしまうくらいの小ささだ。判っちゃいるけど、私は軽くAをにらむ。それに気づいたAは

「判ってますよ…。情報力じゃどう足掻いたってお宅にゃ勝てないし、編集長はおろか、社長にまで、メビウスだけは怒らせるなって言われてるわけですしね…。それに…」

ちらっと、資料庫の方を見て、

「あんな情報流されたときにゃあ、会社の倒産どころか、ホームレスにならなきゃいけませんよ。」

と、軽くいきをついた。まあ、事情を知らない人が聞くと「なんて大袈裟な事を…」という話になるのだろうけども、割と本当だったりする。もちろん、月刊メビウスの読者は夢にも思っていないだろうけども。

で、このA。一体何しにきたんだろうか。まさか、煎餅を食べに来た訳じゃあるまいし。

「で、なにか用事があって来たんじゃないの?」

私がそう聞くと、Aはめんどくさそうなカオをした。

「なあ、うちの契約記者が数ヶ月ほど姿をくらませているんだが、知らないか?たしか、あんたの所も取材の最中に姿をくらましたって言うだろ?」

もちろん、思い当たる節が無い訳ではない。まあ、ヒミツを守って頂けるこのブログをお読みの方には、また別の機会でお話するとして…。

「一応、吹雪編集長直轄の情報だからね…。言っても良いけど、漏らそうだとか、裏を取りに行こうだとか考えるのなら、やめておいた方がいいわよ?」

そう言い始めて、その事柄の詳細を伝える。Aは苦笑いして、

「あぁ…。これは自力で出てきて貰う以外どうしようもねーな…。奴の家族にどう説明すればいいと思う?」
「…知るか!」

もちろん、そんなことは滅多にある事ではない。ただ、とかくこの月刊メビウスという編集部では、少なくとも未遂というのは頻繁におきていて、それ故にこんな感じで他紙が自社の記者について聞きに来る事がよくあるのだ。編集長も、私達や相手に危害が加えられない範囲であれば教えても構わないと言われている。

「結局、世の中ってのは、メビウスの輪のように表裏一体だって事か…。」
「そうかもね。何事もバーターがあった上で世の中は成立してる。編集長の口癖。」

月刊メビウス編集部の日常/つづく)